タイでは、適切な病院で、適切なタイミングで、そして適切な医療を受けるために、民間会社の販売するプライベートの医療保険に加入するのが一般的だ。
またタイではこの医療保険への加入を、福利厚生の1つとして会社で負担してくれるケースがほとんどであるということ、またその医療保険の保障内容(グレード)は、会社によってさまざまだということ、までは前回のエントリーで紹介した。
今回は、(私が勝手に呼んでいる)タイ現地採用の2大福利厚生の1つである、この「医療保険」の平均的な保障内容と、実際に外国人が行くような私立病院で治療を受けた場合、一体どのくらいの治療費を請求されるのか、そういった内容について具体例を交えながら紹介したいと思う。
会社が提供してくれる医療保険の平均的な保障内容
まずは、タイ現地採用者(タイ人スタッフ含む)に対して、会社側が提供してくれる医療保険の平均的な保障内容について。
分かりやすいように表にまとめてみた。
※あくまで私の知っている範囲での平均です。
保障内容 | 平均的な保障額 | 保障内容補足 |
外来診療費 (OPD) |
1,000バーツ/回 年間XX回まで |
外来診察に対して、保障額までの治療費をキャッシュレスでカバー。 超過分は自己負担。この例では1,000バーツ以内であれば手出しはゼロ。1,000バーツを超えた場合、超過分についてのみ自己負担。(治療費が1,500バーツの場合、500バーツが自己負担となる。) |
手術費 (Operation) |
20,000バーツ/回 | 手術に関する治療費をキャッシュレスでカバー。 超過分は自己負担。 |
集中治療室利用費(ICU) | 5,000バーツ/日 7日間/回 |
集中治療室を利用した場合の費用をキャッシュレスでカバー。 超過分は自己負担。 |
入院費 (Room Fee) |
3,000バーツ/日 年間XX日まで |
入院した場合のベッド代をキャッシュレスでカバー。 超過分は自己負担。 |
緊急治療費 (Accident) |
5,000バーツ/回 | 事故等で緊急搬送された場合の治療費をキャッシュレスカバー。 超過分は事故負担。 |
見ていただけると分かるように、保障内容は “外来治療” と “入院治療” の2種類に大別できる。また、治療費が保障範囲内であれば全額キャッシュレス(患者の手出しゼロ)。仮に保障内容を超えた場合でも、超過分のみを負担すればよい。
外来治療。いわゆる風邪や食あたり、ちょっとした怪我等による通院治療、表内では “外来診療費(OPD : OutPatient Department”)がこれに該当する。
“手術費”、”集中治療室利用費”、”入院費”、”緊急治療費”。これらは入院治療に該当する。
利用頻度の高さだと前者、治療費の高さで言うと圧倒的に後者。
タイの医療費(外国人が行くような高級私立病院のケース)
それでは実際にタイの外国人が行くような高級私立病院で治療を受けた場合、いったいどのくらいの治療費を請求されるのか?参考までにいくつかの例をもとに目安の治療費を紹介してきたい。もちろん、高級私立病院の中でも、そのグレード、治療内容によっては以下の例から大きく外れる場合もあるので、あくまでも目安ということで。
(ケース1)
症状 : 普通の風邪
治療内容 : 問診(日本語通訳付き、もしくは日本語可能な医者)、薬の処方
治療費 : だいたい2,000~2,500バーツくらい
平均的な医療保険の場合の自己負担額 : 1,000~1,500バーツ
(ケース2)
症状 : 激しい下痢、高熱を伴う食あたり
治療内容 : 問診(通訳付き、もしくは日本語可能な医者)、注射、点滴、薬の処方
治療費 : だいたい4,000~6,000バーツくらい
平均的な医療保険の場合の自己負担額 : 3,000~5,000バーツ
(ケース3)
症状 : 盲腸
治療内容 : 手術、入院7日、術後の治療、薬の処方
治療費 : だいたい20~30万バーツくらい
平均的な医療保険の場合の自己負担額 : 15~25万バーツ
ここまで見てもらうと分かって頂けるだろう。
会社が提供してくれる民間医療保険の平均的な保障内容だと、日本語通訳がいるような高級私立病院で治療を受けた場合、ただの風邪でも1,500バーツ程度を、手術・入院が必要な場合には25万バーツ(75万円)もの差額を自己負担する必要が出てくる。
個人的には、普通の風邪で高級私立病院なんて行かなくても、英語が通じる中堅の私立病院で十分だけど。
参考までに私が会社から契約してもらっている保険の保障内容は以下の通りだ。
OPD : 3,000バーツ(年30回まで)
Operation : 80,000バーツ
ICU : 8,000バーツ(7日間/回)
Room Fee : 6,000バーツ(30日間/回)
Doctor Fee : 1,000バーツ
Accident : 10,000バーツ
上述した平均的なタイ現地採用の医療保険のだいたい2~3倍くらいの保障内容となっている。ケース1の場合だと自己負担はゼロになるが、それでもケース2の場合では1,000~3,000バーツ程度、ケース3の場合になると5~15万バーツが自己負担となる。
※ちなみに、ケース2の場合だと、ある方法を使えばAccidentの対象となる場合があり、自己負担額はゼロとなる。(。・д・。) 裏技!
中には、駐在員が契約してもらうような海外旅行傷害保険を、現地採用にも福利厚生の1つとして契約してくれる会社もあるが、こちらは稀なケースだと思っていた方がいい。
そのため、会社が提供してくれる医療保険とは別に、個人で別の保険(AIAやBupa等)を契約する現地採用も少なくない。
もちろん、英語が通じるかもしれない中堅私立病院やタイ語オンリーの私立病院に罹れば、治療費はその分安くなるだろう。
ただの風邪であればそれでもよいかもしれないが、 手術や入院を伴う大きな病気、怪我等、命に関わるかもしれないケースは、やはり日本語で治療が受けられ、設備も最高級のものが揃った病院で治療を受けたい、というのが人間の心情というものではないだろうか。
追加で保険に入る場合、手術、入院治療等、外来治療以外の保障内容に特化した保険に入る人がほとんどだ。たとえば疾病、傷害治療を年間300万バーツまで保障するといった契約内容だ。だいたい1年間で2~3万バーツくらいだろうか。
この辺の内容についてはまた別途記事にする予定なので、ここでは詳細は割愛する。
長くなったのでこれまでの内容を総括すると、
- タイでは福利厚生の1つとして、会社負担で医療保険を付けてくれるのが一般的。
- タイには病院のランクがあり、それによって治療内容、設備が大きく異なる場合がほとんど。外国人も多く訪れる高級私立病院では日本語通訳、日本語が話せる医者もおり、日本と同等レベルの治療を受けることができる。ただし治療費は高い。
- とは言っても、保障内容・治療内容によっては、高級私立病院での治療費を医療保険でほぼカバーすることができるので、会社が提供してくれる医療保険の保障内容については入社前によく確認すべし。※保険無しという会社は敬遠することをオススメします
- 手術や入院等の場合は、会社が提供してくれる医療保険ですべてを賄うことはほぼ無理なので、不安であればそれをカバーするために自分に合った保険に個人で加入するという方法もある。
より楽しく、より豊かな人生を送るために、タイでも適切な医療が受けられる環境を構築することは必須条件だ。