前回のおさらい
・タイで働いて給料を得る人はその額に応じた所得税をタイ国に納める必要がある。
・月収10万バーツの人で所得税は約11,700バーツ/月(2015年以降は13,800バーツ/月)。
今回は所得税の節税方法について紹介しよう。
所得税を節税するには大きく3つの方法がある。
1. LTF(Long Term Equity Fund)を購入する
LTF(Long Term Equity Fund)とはタイの株式市場(SET)に投資する長期ファンドのことで、これを購入しある一定のルールを満たせば所得税の還付が受けられる。
LTFを購入し所得税の還付を受ける条件は以下の通り。
■ 年収の15%分(最大50万バーツ)までの購入額が控除対象
→購入自体はいくらでも可能だがこの上限までが所得税控除の対象となる。
■ 保有期間は5年7年
→満5年ではなく数えで5年7年でOK。
たとえば2014年12月に購入した場合、売却可能なのは2018年1月となる。
(2014年、15年、16年、17年、18年の数えで5年。)
たとえば2016年12月に購入した場合、売却可能なのは2022年1月となる。
(2016/07/04追記)
→2016/01/01以降に購入するLTFの保有期間は数えで7年に。
■ 控除対象となるのはLTFを購入した年のみ
→毎年控除を受けたい場合は毎年の購入が必要となる。
例えば月収10万バーツ(年収120万バーツ)の人がLTFを購入して所得税還付を受けようとした場合、還付を最大限に受けようとすると120万×15%=18万バーツまでの購入分が控除対象として申請可能となる。
その場合の課税対象額は、
120万-(基礎控除6万+個人控除3万+社会保険控除0.9万+LTFによる控除18万)=92.1万バーツとなる。この新しい課税対象額(92.1万バーツ)に基づいて所得税を再計算すると、
(15万×0%)+(15万×5%)+(20万×10%)+(25万×15%)+(17.1万×20%)=99,200バーツ
となり、LTF購入前の140,250バーツのとの差額である41,050バーツが確定申告時に還付されることになる。
また一部のLTFには年に1,2回の分配金があるものもあり、初年度の還付金に加えて所持期間は分配金も貰えるので個人的にはオススメの節税方法だ。
ただし1点だけ注意頂きたい。
上述したとおり、LTFとはタイの株式市場に投資している金融商品であり元本は保証されていない。
当然リスク(買値よりも下がる)もあるのでそのことは常に念頭に置き、購入の場合は自己判断でお願いしたい。
もちろん買値より上がることも当然有り得るわけで、その場合には売却益も得られることになる。さらに嬉しいことに売却税は非課税である。
2. RMF(Retirement Mutual Fund)を購入する
RMF(Retirement Mutual Fund)とは年金型の積立ファンドのことで、これを購入しある一定のルールを満たせば上述のLTFと同様に所得税の還付が受けられる。
RMFを購入し所得税の還付を受ける条件は以下の通り。
■ 年収の15%分(最大50万バーツ)までの購入額が控除対象
→購入自体はいくらでも可能だがこの上限までが所得税控除の対象となる。
■ 55歳まで購入・保有しなければならない。また最低購入・保有期間は5年
→LTFと違い流動性がかなり低い金融商品というイメージ。購入・保有期間が長く、本当にタイに腰を据えて働き骨を埋めると決めた人じゃないとなかなか手を出しにくい商品だという印象を受ける。
控除額の計算方法はLTFの場合と同じなのでここでは省略する。
なお、RMFについては購入はおろか検討すらも真剣にしたことはないので、これ以上の情報は持ち合わせていませんww
3. タイのローカル生命保険に加入する
これは日本でもおなじみの節税方法だと思うがタイでも同じ方法で節税が可能だ。納税者本人がタイの保険会社の生命保険に加入した場合、 ある一定のルールを満たせば上述のLTFと同様に所得税の還付が受けられる。
タイの生命保険に加入し所得税の還付を受ける条件は以下の通り。
■ 最大10万バーツまでの加入額が控除対象。
→加入自体はいくらでも可能だがこの上限までが所得税控除の対象となる。
■ 最低払い込み契約期間(満期)は10年。
→10年払い込みの15年満期だったり15年払い込みの25年満期だったりと、こちらもLTFと違い流動性がかなり低い金融商品というイメージで、本当にタイに骨を埋めると決めた人じゃないとなかなか手を出しにくい商品だという印象を受ける。
(2016/07/04追記・修正)
→実際に加入された方のお話だと、4年払い込みの10年満期等の商品もあるようです。ただやはり個人的にはLTFと比べると満期までが長い印象です。
控除額の計算方法はLTFの場合と同じなのでここでも省略する。
実は私もこの生命保険への加入は一度検討しようと資料を取り寄せたことがあるのだが、ほとんどの商品は払い込み期間は7年以上で、満期に払い込み額の1.5~2倍を受け取れるという金融商品だったと記憶している。
私の場合はその流動性の低さから結局は加入は見送ったのだが、保険会社の営業の方曰く、生命保険に加入するメリットはほとんどの商品で払い込み期間中は年1回の配当金が支給されることと、掛け捨てではないので満期を迎えたときには支払った保険料の約2倍の金額が返還されるということらしい。
※私や私の周りで実際に加入している人はいないのでほんとうに2倍の金額が返還されるかは不明です。
ちなみに私が節税対策として購入しているのは節税方法の1つ目で紹介した「LTF」である。
実際に毎年購入し所得税控除も しっかり受けているし年1回の定期配当もある。また私の場合は購入した時期がよかったせいか、現時点では購入時の約150%程度の価値に値上がりして いる。そのためこのまま大暴落などがない限りは売却時にそのキャピタルゲインも得ることができ、まさにLTFのメリットを最大限に享受できている状態だ。
LTFの購入方法はいたって簡単だ。
LTF自体はさまざまな銀行で取り扱っているメジャーな金融商品なので、銀行の窓口で「LTF」、「Tax Refund」などと言えばすぐに商品を紹介してくれる。特に11月くらいからは各行一斉にLTFの販売に力を入れ始めるので銀行に行けばすぐに分かるだろう。
購入にあたって必要なものは、
・パスポート
・ワークパーミット
この2点だけである。
きっと行員にもノルマがあるのだろう。10万も20万も購入する場合には喜んで対応してくれるので言われた書類にサインするのみで非常に簡単だ。
個人的には各銀行とも商品自体にそんなに差があるようには思えないので、私の場合は好きな銀行で購入するようにしているが一応LTFの中でも商品によってリスクの大小等があるようだ。好きな人はその辺も調べてみて自分にあったLTFを購入するのも楽しいのではないだろうか。
コメント
最近、経理課スタッフにLTFの購入を薦められました。
これまで節税対策などしたことがなかったのですが、
皆さん真剣に考えていらっしゃるのですね。
ラチャプックさん
はじめまして。
私も節税対策としてはLTF購入をオススメすると思います。
所得税還付+毎年の配当金+LTF自体の売買益で、3~5年で購入時の1.5倍くらいになることもあります。
駐在員、タイ人、現地採用問わず、私の周りでは購入者は多いですね。
Natsuさん、初めまして。特に節税や金融に関する情報が分かりやすく、いつも参考にさせていただいております。
私は、払い込み期間の少ない4年(満期10年)を購入しており最大10万バーツの控除を受けていますが、さらに5年(満期11年)の商品購入を勧められております。生保担当者の説明がよくわかりませんで、大変申し訳ないのですが、違う会社の生保であれば20万バーツの控除は可能なのか、分かりましたら教えていただけますでしょうか。
利回りがいいので、いくら購入してもいいけど、控除は10万バーツまでと聞いていたので、ちょっと混乱しております。
ピコーさん
はじめまして、コメントいただきありがとうございます。
確か生命保険の控除枠は年間で最大10万バーツ迄だったと記憶しております。違う会社であっても合計で10万迄と思います。
はじめまして。この度タイで生命保険を購入した際にとても参考になりました…ありがとうございます。
ちなみに一つ伺いたいのですが、タイのローカル生命保険の所で所得控除の条件が「最低払い込み期間は10年」とありますが、タイ語では「กรมธรรม์ประกันชีวิตมีกำหนดเวลาตั้งแต่10ปีขึ้นไป 10年以上の満期保険証券」とあります。上記ピコーさんも4年払いこみの10年満期で控除を受けられているようです。
どちらが正しいのでしょうか?ご教授頂けたら幸いです。
の さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
どうやら最低払い込み期間ではなく、最低契約期間(満期)のようですね。大変失礼しました。記事を修正しておきますね。